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クリニックの紹介

クリニックで行っている関節リウマチの最新薬物治療

はじめに

この10年、リウマチ治療は画期的に進歩し、ほとんどのリウマチ(正式には関節リウマチ)は薬物治療で軽快ないし寛解(症状がまったく無くなり、正常の生活を営める状態)を得られるようになりました。しかし、初期治療に失敗すると、今でも関節破壊が進行し、生活に不自由を感じておられる患者さんも数多く存在します。それだけリウマチ専門医に課せられた責任は大きなものがあります。

私は大分赤十字病院で21年間リウマチ治療に携わり、平成18年よりこの地でリウマチ性疾患を専門に扱うクリニックを開院し、現在では2000名あまりの患者さんの診療に当たっています。すでに生物学的製剤の導入例は650名を超え、月に250名の患者さんに対し、生物学的製剤を投与しています。多くのリウマチ患者さんを診療する為、システム作りにも気を遣い、安全に効率的に治療が行えるよう日々工夫を行い、日進月歩の新たな診療体制を構築しつつあるところです。お蔭で全国から、当院のシステムを紹介するための講演依頼があり、多くのリウマチ専門施設で当院の投与手順や感染症予防システムが採用されていることは、大変光栄なところであります。

当院でのリウマチ薬物治療

当院での生物学的製剤導入は全患者の25%程度であり、75%のリウマチ患者さんは従来の抗リウマチ薬で十分コントロールされています。初期には少量のステロイド(プレドニゾロン2.5mg程度)、シオゾール10mg(金の注射治療)、リマチル(代表的抗リウマチ薬)、痛みどめ(モービック、ロキソニンなど)の4併用療法より治療を開始し、これでコントロールが不十分な例に対し、メソトレキセートを開始するようにしています。プレドニゾロンは初期のみの投与で必ず中止離脱(完全にステロイドが不要になる状態)します。

メソトレキセート(リウマトレックス、メトレートなど)は抗リウマチ薬の中心となる薬剤であり、現在はリウマチ薬物治療のKey(鍵)となると言われていますが、やはり、間質性肺炎発症の問題や服薬中は妊娠ができない、腎機能低下、ウイルス肝炎罹患例では投与禁忌など、長期安全性には少し問題があります。したがって、当院では上記初期の治療薬剤でコントロールが不十分な場合に2番目に選択するようにしています。これらの治療でもコントロールされないか、関節破壊進行の恐れがある場合は、生物学的製剤を考慮することになります。ただ、生物学的製剤はそれなりに金額もかかるため経済的な面や、合併症などで生物学的製剤を投与できない方では、アラバやプレディニン、プログラフなど他の免疫抑制剤を選択する場合もあります。

現在生物学的製剤6種類が使われていますが、それぞれに一長一短があり、患者さんの骨破壊パターンや炎症の程度、社会経済的背景、病気の特徴などを鑑みて、投与する生物学的製剤の種類や投与間隔、投与法を決めているのが現状です。当院では全ての生物学的製剤を選択しており、現時点ではレミケード52例、エンブレル338例、アクテムラ112例、ヒュミラ89例、オレンシア36例、シンポニー51例の投与実績があります。

織部リウマチ科内科クリニック
織部元廣